敵情視察中

最近、明神さんが異常にエージ君に優しい・・・というか、甘い気がする。

今日もそう。

夕方からのテレビ番組。いつもは私が音楽番組を見ているのに、今日は野球中継があるからって見せて貰えなかった!

もちろん、私はエージ君に抗議した。

「ねえ!こっちの番組終わってからでも野球まだやってるでしょ?それまで見せてよ。」

「ばっかヒメノ。こーゆーモンは初めから見るからおもしれェの!」

「そうかもしれないけど!今日は私の好きな歌手が出てるの!」

「音楽ならCDで聞きゃいいだろ?」

「もー!」

そうしたら、すっと明神さんが割って入ってきた。

もちろん、明神さんは私の味方をしてくれる・・・と思ったんだけど。

「まあまあひめのん。今日はエージの好きな投手が投げてるみたいだしさ、アレだったら録画する?」

だって!信じられない!!

私が非難の目を向けると流石に悪いと思ったのか、後でプリンあげるから、とか言ってきたけど。

プリン貰っちゃったけど!

プリン食べてたら、エージ君が「またシリがでっかくなるぞ〜。」とか言ってきたし!

何だか甘いモノに釣られたみたいで後で更に悔しくなったし・・・。

これって子ども扱いされたの?

はあー、とため息ついて。

「今日はもう寝ちゃお。」

腹が立ってたから、明神さんとエージ君以外におやすみを言って、私は布団に潜り込んだ。





「おいエージ。ひめのんめちゃくちゃ怒ってたぞ。」

ここは管理人室。つまりオレの部屋。

皆それぞれの部屋に戻った後、オレはエージとこっそり会議をしていた。

会議・・・と言っておく。

「まあ怒るだろうな。でも、交換条件だしな〜♪」

「ぐぬ・・・。」


「約束は守れよ。」

「わあってるよ。そんで、今日の様子は。」

「ええっとな、隣のクラスの山田ってヤツが最近活発に周囲の人間を抱きこんでるぞ。」

「何っ!?」

「ひょっとすると近々動きがあるかも知れないなあ。」

「オノレ山田・・・。そんで、同じクラスの坂井ってヤツ、あいつはどうした?」

「ああ、あいつか。あいつなら・・・。」

そう。ここは深夜になると管理人室から作戦会議室になる。

「そうか。ならまあ暫くはほっとくか。問題は山田だな・・・。」

エージはフリーのスパイ。報酬次第で働くエージェントだ。

「明日も頼んだぞ。」

そんで、オレは姫乃の身辺警護を担当するボディーガードだ。

・・・ボディーガードなの!!

「わかってるよ。じゃあ明日も野球中継な。」

「おう・・。明日はアイスでも買っとくかな・・・。」

「あ、多分明日は食いモンで釣っても機嫌なおらねーぞ?」

ええ!!

「何で!」

「あいつ太るの気にしてるから。」

「ひめのん太ってないだろ!?」

するとスパイ・エージがにやりと笑ってオレを見た。

「気にしてしまったんだな〜。」

エージ・・・契約エージェントが意味深な言葉を残して「すぽん」と壁から消える。

「ええ・・・。じゃあ明日どうしよう。」

残されたのは途方にくれたオレ。

今日ひめのん怒ってたしな〜・・・。

明日まで怒らせたら敵を叩く前にこっちが撃沈してしまう。

呻いて布団にばたりと倒れ込む。

「苦しィ。」

胸の辺りがずしりと重い。

最近特に酷くなってきた様な気がする。

きっかけは何だったか・・・はっきりとは覚えちゃいないが、ハセと戦った日位からか?

いや、きっともっと前からか。

気が付いたら目が姫乃を追っかけて、目が届かなくなると不安になる。

・・・エージを仲間に引き込めたのは、幸運だったのか、不幸だったのか。

とにかくこの胸の苦しみから解放されるにはどうしたらいいのか、考えられる手段をとってはみたがまだ一向に良くはならない。

この病気は暫く治りそうにないなと強く自覚して、明日どうやって姫乃の機嫌を直すかを考える。

ギュッと目を閉じる。

明日は何かしらんが奇跡が起きねえかな、とか呟いて、オレは眠りについた。


あとがき
お題第二段です。
もう手が甘い話しか書かないので、初めから甘いんだ!と言ってしまえな感じです。
片思い風明姫。エージは遊んでます。報告はしますが、助言ましません。
せっかくのチャンネル権がなくなるので(笑)
2006.10.06

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