いとしい

全部全部。

私が知っているあなたの事全て。

酷い寝相とか。

朝起きた時のボサボサの髪とか。

好きな食べ物とか。

苦手な食べ物とか。

意外と短気なところとか。

お風呂に入っている時の鼻歌とか。

怒られて子供みたいに不貞腐れる顔とか。

強がりで意地っ張りなとことか。



大きい背中、手。

頭を撫でてくれる時伝わる体温。

明かされた辛い過去も。

戦う時、時々見せる嬉しそうな顔。

どこかへ行ってしまいそうな危うさ。

しがみつくと、困った顔をした。

「どうした?ひめのん。」

そうだ、声。

声も。

踊る黒いコート。

揺れる白い髪。

全部全部。

私の魂全てで、捕まえていたい。

こんなに私は貪欲だったんだって今頃気が付いた。

苦しい胸を押さえて、ああ、いとしい!

いとしい!

いとしい!!

体の中で膨らんだ気持ちが弾けて飛び出して行ってしまいそう。

「喉から手が出る程」ってホント、何て解かり易い例。

どうしてしまったんだろう私は。

どうしてしまったんだろう私は。





「好きですよ〜。」

まるで「この佃煮、好きですよ。」くらいのノリで言ってみた。

「何が?」

聞き返す。

当たり前だよね。

主語抜けてたもん。

唐突だし。

食事中。

テレビをつけて、ご飯を食べ始めて直ぐ。

「明神さんの事。好きですよ。」

ふと思いついたみたいに。

「あー…。」

何が、「あー」なんだろ。

わかってるのかな?

「オレも好きだなあ。」

まるで「この塩サバ好きだなあ」くらいのノリで返って来た。

「何が?」

わかんないよ。

主語が抜けてるもん。

「ひめのんの事。」

「ああ…。」

そっか。

顔を真っ赤にして目を逸らす。

始めて見る表情と仕草。

私は新しい「いとしい」を見逃さない様に、頬杖ついてそれを眺めた。


あとがき
姫→明の凄く甘いのを書きたい書きたいと思ってやっとこ書きました。
ひめのんが物凄く明神が好きです!って話です…。もうそれだけ(笑)
2007.01.03

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