ひなた
休日の昼間、特に用事もないから昼間まで寝ていた明神はうたかた荘の玄関前で目を覚ました。
「う…?」
寝ぼけた目をごしごしと擦って辺りを見回す。
ああ、またか。
いつも通りの事なので特に何とも思わないけれど、今日は確か休日で姫乃はうたかた荘の中にいるはずなので、起こしにこなかった事が少し不思議だった。
立ち上がって背中の砂を払い伸びをする。腰と肩がボキボキと音を立てた。
太陽が眩しい。だらしなくずれたサングラスをかけ直すとあくびをしながら玄関に入る。
玄関に入ると、共同リビングのソファーで横になり、姫乃が寝ていた。
ああ、と理解した。
そりゃ起こしに来ない訳だ。本人が眠っている。
時計を見ると2時。時間が解ると何故か腹が減ってきてグウ、と音を立てた。
「…ん…。」
その音を聞いてか、姫乃が目を覚ました。
目を擦りながら上半身を起こすと、辺りを見回しながら目をシパシパさせている。
「まじかよ。」
思わず呟く。
まさか今の音覚えちゃいないだろうな。
「あれ、明神さん…。私寝ちゃってた?今何時??」
「えっとね、昼の2時。」
「えっ!!」
時間を聞いて慌てて起き上がる姫乃。
「ご、ごめんなさいっ!お腹すいた?お昼すぐ作るからね!!」
バタバタと台所に走っていく。
姫乃を起こすきっかけになったのが腹の虫というのがなんとも情けない。
姫乃がまったく覚えていないのが幸いだ。
何となく、さっきまで姫乃が寝ていたソファーに座る。
料理ができるまでする事がないというのもあった。
ゴロンと横になると、さっきまで姫乃が寝ていたのでソファーは人肌程度にポカポカと暖かい。
まるでひなたにいる気分になる。
起きたとこなのにな。あ、ひめのんの手伝い何かしないと…。
なんて事を考えながら、どんどん意識が遠くなる。
「明神さん、ご飯できたよ。」
その声で目が覚める。
「う?」
寝ぼけた目をごしごしと擦って辺りを見回す。
そこはうたかた荘の玄関先。
さっきと違うのはエプロンをつけた姫乃が見下ろしている事くらい。
「…おはよ、ひめのん。」
「おはよう、明神さん。ご飯できてるよ。」
2時のやり直しをした気分になる。
もしかしたら、一度起きたのは夢だったのかとも思う。
立ち上がって背中の砂を払い伸びをした。
大あくびをして目を細めると、姫乃が笑いながらずれたサングラスに手を伸ばす。
サングラスを小さな手に取って、かけ直す様に顔の前に差し出したので少し屈んで手が届きやすいようにしてやる。
「よいしょ。」
少し背伸びして、サングラスを明神にかけさせてやる。
くしゃくしゃと頭を撫でて、ありがとう、と明神。
二度目のお昼。今度は二人並んでうたかた荘の玄関をくぐった。
あとがき
甘い話にしようと思ったんですが、日常のふわふわした話になりました。
私の中で、「姫乃は明神のご飯を作っている」という事は完全に固定になっている様です…(笑)
2006.11.06