女の子は女の子と

「ねえ……桶川さんはあの人のどこがそんなにいいの?」

会話の端々に登場する「明神さん」と言う姫乃の言葉とその口調が雨宮にはひっかかった。

少し離れてアゲハと話をしている明神を値踏みする様に眺めながら姫乃に聞いてみる。

のそっと背が高く、年下と話をしているのにどちらかと言うと威厳がなく、飄々と……だらしない姿に見える明神と、いかにもしっかり者の姫乃は雨宮にはアンバランスに感じられた。

雨宮の明神に向けられる視線は気にせず、姫乃は答えた。

「カッコいいのと……」

「か、カッコ……」

「凄くいい人! 頼りになるし、優しいよ」

姫乃がキラキラした目で雨宮を見た。

その真っ直ぐな眼差しに雨宮はたじろいでしまう。

「そ、そう……(何だろ私、この子……嫌いじゃないけど苦手だわ)」

「それで、雨宮さんはアゲハ君のどこが好きなの?」

考え事をしていた雨宮に、姫乃が魂のストレートパンチを放った。

雨宮は面食らって動揺し、顔を赤らめる。

「す、好きって何の話!?」

「え? 雨宮さん、アゲハ君の事好きなんじゃないの? そう見えたんだけど」

「誤解しないで! それから……雨宮さん、もやめて。桜子でいいわ」

「じゃあ私も! 姫乃でいいよ、桜子ちゃん」

「そ、そう……じゃあ、姫乃……でいいかしら」

「うん!」

「(何だろう、逆らえない……。この子も何かの能力者?)」

「それで、アゲハ君のどこが良いの?」

「どこも良くない! 馬鹿よ馬鹿! 馬鹿でガキで……真っ直ぐなの」

「そうなんだ。気持ち、届くといいね」

「だからアナタ人の話聞いてる?」

「アゲハ君も桜子ちゃんの事、好きだと思うんだけど……」

「ちょ、やめてって!! もう!」

「桜子ちゃんが照れた。可愛いね。ねーアズミちゃん」

「か、可愛いってちょっと…………アズミちゃんって……?」

雨宮が姫乃に勝つ事は多分、もう少し素直になるまで叶いそうにない。

だけど苦手が好きに変わるには、多分そんなに時間はかからない。







男の子は男の子と

雨宮と姫乃が少し離れた所で友好を深めつつある中、少し離れた場所でアゲハと明神がその様子を眺めていた。

「おお……雨宮が同い年の女子と喋ってる。すげーな、桶川って」

「だろ?」

クラスメイトとまともに話をしているのを見た事が無いため雨宮が姫乃とちゃんと喋れるかどうかを心配していたアゲハは、二人の様子を見て驚いていた。

姫乃を褒められて明神も悪い気はしない。

微笑ましい姿を鼻高々で眺めていた。

「ひめのんは、ちょっと凄いパワーを持ってんだよ」

「……そうかも。あ、雨宮が怒ってらァ。はは、楽しそうだ」

「しっかし、やっぱいいな。女の子がああやって楽しそうに喋ってんの」

明神がそうポツリと呟いた。

アゲハはそれを聞き……確かめなければならない事を思い出した。

「……先輩、噂で聞いたんスけど」

「何だ? あ、先輩とか無しな。明神でいい、明神で」

「あ、ウス。明神さんって……ロリコンなんスか?」

「剄蘭」

男の子同士は女の子同士と違って、仲良くなるのに少々時間がかかります。







男の子は男の子と2

「んで……オレ、実は今日どうしても明神さんに聞きたい事があるんだけど」

「何だ?」

「身長……」

「んお?」

「一体何食ったら、そんなに身長伸びるんだ?」

少し恥かしそうに、アゲハは聞いた。

前々から……ヒリューと再会してから気にしているコンプレックス。

雨宮と並んだ時、ヒリューと雨宮が並んでいる時、いつも気になるのがこのちょっと足りない身長だった。

初めて明神と姫乃を見た時真っ先にその事が頭をよぎり、恥かしいと思いながらも聞かずにはいれなかった。

先に余計な事を聞いてしまったのは、やはり聞き難い事だったので後回しになったのだ。

「最近牛乳毎日飲んでるけど効果あんのかわかりゃしねーし。明神さん何かいいの知らねーの?」

「オレ……なあ。この歳までほぼカップラーメンで育ったからなァ」

「……嘘ォ!!?」

「いや、マジ。自炊苦手だったからな。あ、そだそだ味噌汁は飲んでたよ。後、米食ってた。それから……パンと缶コーヒー」

「そ、そんなモンで……」

「参考にならなくて悪いなァ。遺伝だこりゃ」

今日こそ何かの糸口を手にする事が出来るかもしれないと期待していたアゲハは、膝をついて崩れ落ちた。

明神も申し訳なさそうに頭を下げ、側にしゃがむ。

「力になれたら良かったんだけど……あ」

「あ? 何? 何かあるんスか? やっぱ牛乳? 納豆とか」

ポンと手を打つ明神に、アゲハが藁をも掴む気持ちで顔を上げた。

明神はにっかりと微笑み、頭を掻いた。

「いやァ、最近はひめのんが作ってくれる美味い飯を、規則正しく食ってるな〜と思って」

「暴王の月」

やはり男の子同士が仲良くなるには、一度や二度本気で喧嘩をする事が一番のようです。


あとがき
みえるひと+PSYRENで書いてみました。
ひめのんと雨宮だと、ひめのんがどんどん押して気が付いたら仲良くなるって感じでしょうか。
男の子同士も影虎さんとアゲハみたいな感じで「先輩オッス」って感じで仲良くなりそうだと思うんですが。
妄想膨らませて書きました。
微妙ですが、書き直しています。

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