「未来計画」

オレは考える。

全てはひめのんがあと二年、学校を卒業してからだろう。

結婚、となるとそれなりにお金もいるだろうから、これからは十味のじーさんに報酬ありの仕事も頼まないと。

後、ご両親だけど、雪乃さん…お母さんは19歳でひめのんがお腹にいたという事は高校を卒業してすぐにお父さんと結ばれたという事だから、きっと理解してくれるだろう。

心配なのはお父さんか…。

海外に行ってるって事は挨拶しに行くのもなかなか大変だ。

いや、娘が結婚するとなれば帰ってきてくれるかもしれない。

むしろこういうのは父親の方が厳しいもんなのかな。

アパートの管理人とはいえ貯金はないし、職も微妙だし、安定した収入もない。

こんな奴に娘を任せられるかと言われたらどうしよう。

いやいやいや。

オレとひめのんの絆はそんな簡単には壊せませんよ?

いざとなれば駆け落ちだって…って言ってもうたかた荘は置いていけないしなあ。

やっぱり説得するしかない。

確かおじいさんがいたはずだから、先にそっちに根回しをしておいた方がいいかもしれないな。

うん。

式は少人数、知り合いの「みえる」連中と陽魂達だけでしよう。

洋式なら十味のじーさんに神父を頼もう。

いいな。

教会で、ひめのんが白いドレスを着てるんだ。

ガクは悔しがるだろうな。

でもきっとひめのんが幸せなら祝福するはずだ。

まあ、ひめのんには。

…問題は。

オレがいつひめのんに告白するか、という事だ。

明日?明後日?それとも一週間後?チャンスがあれば?

…あ、ひめのん帰ってきた。

「おかえり〜。今日も寒かっただろ〜。」

ああ駄目だ。本人前にしたら動悸が…。

こうして365日を君と過ごす。




「未来計画2」

全ては私が後…そう、せめて二年、高校を卒業してからだと思う。

明神さんはどう言うかわからないけど、大学には行かずに簿記の勉強をしてアパートの経営をちゃんと手伝おうかな。

私がずっとうたかた荘にいたら、お仕事帰りの明神さんをいつでも迎えてあげられるし。

アズミちゃんと今より一緒にいられるし、エージ君、ガクリン、ツキタケ君達とももっと色んな事話せるよね。

お母さんは、きっとわかってくれるよね?

お父さん…は、手紙でも書こうかな。

…一応ね。

でも、け、結婚…ってなるとやっぱりお金もかかるし、今からお小遣いちゃんと貯めていかないと駄目かなあ。

料理ももっと上手くなって、喜んでもらわないと。

明神さんにご両親はいないって聞いてるけど、お墓があるなら一度一緒に行きたいな。

ちゃんと私が姫乃ですって、挨拶したいもんね。

まあ、だけど…今一番問題なのは。

明神さんがいつ私をちゃんと見てくれるか…って事だよね。

あ、もううたかた荘着いちゃった。

「ただいま〜。」

ほら、いつもみたいに私の頭をなでて、まるで妹みたいに接するんだから。

いつになったら対等の女性って見てもらえるのかなあ。

こうやって、365日をあなたと過ごす。




「未来計画3」

「でも、どうしてオレじゃ駄目なのか知りたいなあ。」

「どうして?」

「これでも結構、本気なんだよ☆それを理由も言わずに「無理」は酷いよ澪ちゃん。」

最近毎日「愛の告白」をしてくる白金を、軽くあしらっていた澪だけれど、そう言われて「ふむ」と手を口にあてる。

大体、本気で言ってるなんて思っていなかった。

だから軽くあしらっていたのもある。

「まあ、何だ。お前うざい。」

「あはは☆酷いなあ。」

酷いなあ、と言いながらも堪えた様子は見せない。

いつもへらへら笑っていて、腹の中がわからない。

「後な、お前には重大な欠点がある。」

「…何だい?」

ぐっと、拳を強く握り、澪はきっぱりとこう言った。

「髪の、色だ。」

「…ええ?」

白金も澪も、魂の力が強い為部分的に白い色をしている。

「私はなっ、いつか子供を産む時に黒髪の可愛い女の子を産みたいと思っている。」

「…へえ。」

「それも、姉妹だ!お姉ちゃんはしっかりもので素直な子。妹は甘えん坊の人見知り。そんな二人を、私は産む。」

何故か断言である。

(…黒髪の二人って、思いっきり個人だと思うけど…☆)

「じゃあさ、オレと結婚して姫乃チャンとアズミチャンを養子にしたらどうだい?」

「なっ…養子だと…!?」

澪の頭の中でぼわっと妄想が広がる。

案内屋の仕事を終え家に帰る澪。

玄関を開けると二人の可愛い子供が出迎える。

「澪ママ!おかえり!!」

「アズミ、いい子にしてたかい?」

「お母さんお帰り〜。アズミったらお母さんがいないって泣いて大変だったんだよ?」

「こら〜、アズミ。姫乃姉ちゃん困らせたら駄目だろう?」

「だって…。」

「明日はもっと早く帰ってくるからな?」

「うん!」

「お母さん、ご飯もうできてるよ?食べるでしょ?」

「ああ。姫乃、悪いね。」

「だってお母さんお仕事だもん!こんなのへっちゃらへっちゃら!」

(…おちゃん、澪ちゃん…。)

「澪ちゃん。」

「どぅあああ!!」

耳元で名前を呼ばれて思わず叫ぶ澪。

「なっ、なんだ!」

「何だって…。30秒位止まったままだったよ澪ちゃん。」

「うっうるさい!大体、養子なんて無理に決まってるだろう!姫乃には雪乃がいるだろうが!」

(あ、そこまで本気で考えたんだ。)

…可愛いなあ。

「何だ…人の顔をじろじろ見て…!」

「いや、やっぱり澪ちゃん可愛いなって思ってサ☆」

ボグッ!

澪の蹴りが白金の顔面にクリーンヒットする。

「一度死んどけ!!」

ごろりと地面を転がってひりひりする顔をなでる。

「まだまだ、諦めないよ。」

ずんずんと遠ざかる澪の背中に、そう呟いた。


あとがき
お礼文のまとめです。
「未来計画」シリーズ(笑)
三本目の白×澪は一度書いてみたかったんですよ!!の一発目です。

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